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8.1.2002

No.0159

麻酔によるショック?

 6月に悲しい事故が起こりました。既に新聞やTVのニュース番組で御存知な方も多いと思いますが、あらためて今回のコラムに取り上げてみようと思います。

 その事故のあらましは次のようなものです。
 埼玉県の歯科医院で4歳の女児が虫歯の治療中に昏睡状態になり、その後死亡するという事故が起きました。この女児にとってこの歯科医院は4回目の来院だったそうです。
 当日の歯科治療の内容は‘虫歯が大きいので、局所麻酔の注射をして虫歯を削り神経を取り除く’という処置だったそうです。
 歯科医師が女児の様子の異変に気付いたのは、虫歯の神経を取り除き一連の処置を終える仮封をし終わった後だったそうです。
 女児の顔面は蒼白で、既に呼吸は停止していたといわれてます。すぐに救急車の手配をし、人工呼吸と心マッサージを施したのですが、女児は蘇生されませんでした。
 残念ながら、搬送先の病院でまもなく死亡が確認されました。
 使用された局所麻酔の薬剤は、歯科用として広く一般的に使われている標準的な“リドカイン”という薬剤でした。局所麻酔薬の投与量は0.6ml〜0.8mlだったことから、これも標準的で量的問題はないように思えました。又、初診受付時などに書いて頂く診察事前の問診票では、女児自身のアレルギー体質の有無は、『なし』だったとの事でした。
 以上が事故のあらましですが、現時点では、はっきりした死因の確定には司法解剖を待たなければならない状態ではあります。

 重篤なショック症状の発生により死亡する事は、歯科治療中においては極めて希な事であります。
 しかし、局所麻酔による【軽度な副作用(ショック様症状)】は、決して希ではありません。局所麻酔を投与されて間なしに、気分が悪くなったり動悸や吐き気などを訴える患者さんは偶におられます。大概の場合は、歯科処置を中断し少し休んでもらうと回復します。

 この機会に皆さんにも局所麻酔薬使用時のトラブルを知っていただくのも良いことと思い以下に示してみました。

 A)アレルギー反応:全身性又は局所のみ
 B)添加物が起こす反応
  1)防腐剤:アレルギー
  2)止血剤として添加されている昇圧剤:頻脈や不整脈、高血圧
 C)その他
  1)連用による神経毒性
  2)血管内に吸収され、一時的に「薬に酔った状態」=局所麻酔薬中毒
  3)過度の不安に伴なう過換気症候群
  4)硬膜外・脊髄麻酔で麻酔作用に伴うもの(省略)
 BCとも多くは使用時に「薬が血管内へ入った,吸収された」ために起こるのですが、使用時に逆流を確かめながら使用しても起こる可能性あります。症状は遅くとも30分以内に改善し、基本的に後遺障害を残す事はありません。発生頻度はそれほど高くないものですが、常に「起こり得るもの」として医療現場は警戒しています。
 仮に起きても即【医療事故】とされるのは、過敏な反応ですしかえって副作用を増幅してしまうので好ましくありません。

  “皮内反応によるアレルギーテスト”について
 皮内反応は意味がないとはいいませんが、確実に危険を予見するものではありま せん。
 皮内反応で行われる「注射」という行為に対する身体の過敏反応→身体のどこでも何度も叩いているとはれてきます。これが過敏に起こしやすく、一回の注射行為で反応の出る方もいます。
 アレルギーを心配な方は、お近くの大学病院または総合病院の麻酔科外来にご相談される事が良いかと考えます。
 「分からない+何か起こるかもしれない」という不安を持たれる事は当然ですが、最初から構えすぎたり、過剰な不安を抱かれる事は長い人生を考えた時に決してご自分の為にはならないと思います。

 ショック症状の主な原因は精神的な物が大部分を占めています。精神的緊張やどんなことをされるかという不安、恐怖心に由来します。
 歯科治療は、痛いもの不快なものと思っている方や過去にそのような経験のある人は、ちょっと考えを換えてみては如何でしょう?。今は、昔に比べて、かなり痛みの少ない治療法になってます。
 怖くてしょうがない方は、笑気を吸いながら治療を受けられます。もちろん保健が適用されます。これは、恐怖や不安、緊張を和らげ、ゆったりとした気分になり、治療を受けやすくなります。また、患者さん自身も自信がつき徐々に治療を受けるのが楽になるではないかと思います。



寺田先生

 

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